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父が開業した時に使っていた古い症例の写真が出てきました。

今はこのような猩紅熱のような病気はすっかり遭遇しなくなりました。麻疹もこのようにひどい麻疹は予防接種が進んだことでいなくなりましたね。腸チフスとか、発疹チフスとか、ジフテリアとか、私がほとんど見たこともない症例がありますね。

最近は、こういう症例の写真もGoogleで検索すると瞬時に見ることができ、まあ、たかだか15年ぐらいの差ですが、このあたりの情報技術は格段に進歩した感じがありますね。

その反面、ふだんやっていることは、ほとんど変わりがないようにも思います。MARSとか新しい病気だけでなく、昔からある赤痢とかインフルエンザとか、最近ではデング熱やジカ熱、といった感染症は常にありますしね。衛生観念はすごく発達したんですけど、やっぱり感染症って、たとえ衛生観念が発達していても、流行するときは来るんですね。衛生観念以上に世界中を人が動くようになったからでしょうね。 回り回って同じ感染症が出るようになったのだと考えられますね。

そのため、診察の方法は、基本的に変わっていないのですが、問診票などで聞く項目は、アレルギーの有無や海外渡航歴などの項目が加わっていますし、予防接種は何を、どこまで打っているかなども聞くようになっています。





一番違うのは、先ほどの症例写真のところにあるように、情報を集めるところが大きな違いかもしれません。前はこういう教科書を読んで勉強をして、という風にしていたんですが、教科書に載る時点でその情報はすでに古くなっていることもあったんですが、いまでは先週出た研究結果がその場ですぐに反映されるようになるようにもなっています。ですから、診療上の疑問に応えるプロセスが大きく変わりましたね。

もしかすると、あと10年もすると、人工知能を用いてリアルタイムでいろいろな診断ができるようになると思います。R2-D2のようなロボットが医師のサポートをしてくれる時代もいずれ来ると思います。

医療が進んできたところでひとつ心配なのが、検査のやりすぎ、過剰検査が問題になるんじゃないかということです。検査をすれば医療の進歩により今までは見つからなかったものまで見つかったりするんですね。隠れ脳梗塞とか、今は病気ではなくても将来病気になるかもしれない、というものが見つかるのですが、今は隠れているんだから、そこまで深刻にならなくてもいいじゃないかとすら思うことも時にあります。

寿命に関しても、もうこれ以上劇的に寿命が伸びることはないと思うんですね。健康的に寿命が延びればいいのですが、病気や介護が必要な状態でいたずらに寿命を延ばすことにどのくらい意義があるのか、と考えてしまいます。急速に高齢化が進んでいるので、寿命を延ばすために管理しなければいけない病気が増えるという弊害もあります。たとえば、高齢の方が病院に行って一人の先生が気を使って3種の薬しか出さなかったとしても、体の不具合でいろんな科目のお医者さん5人にかかるとそれだけで15種類の薬を飲むようになってしまう。医者の私が言うのも変ですが、医者は薬を出すのが仕事ですから。(苦笑)

それは薬では直らないんです。これは私が尊敬する「「老年症候群」の診察室」という本を書かれた大蔵先生もおっしゃっているのですが、それは年をとっただけで、その症状に応じて薬を飲むよりも、外に出てみなさんと遊んでいた方がよっぽど健康になるのではないかと。そういう方向に切り替わればいいかなと私も思っています。

時代や器具は変われども、医療で変わっていないものは、やはり患者さんとお話をして、患者さんがどんなことが心配なのか、どういう生活をしているのかを病気の背景として知り、治療に役立てることだと思います。この医療の根本は変わっていないし、これからも変わらないと思います。

(次回は、未定です)