医院紹介 先生の紹介 健康コラム スタッフのご紹介 診療について 地図 リンク


<< 前のページに戻る




--松村医院はお父様が始められたそうですが、長いこと通われてる方も少なくないのでは?

松村:はい、松村医院は1969年に父の松村幸司が、ここ上野毛(かみのげ)で開業した医院です。父はその前から、上野毛にあった病院で働いていて、事情でその病院が閉鎖となり、そのままここで開業しました。そのころから数えるともう30年以上かかっている患者さんもいます。また、多くの患者さんはご家族で拝見しておりますので、たとえばある患者さんがおなかが痛いということで来院されたけれども、その方のお父さまがかつて同じころ胃の病気をしているので、その方にとっての「おなかの痛み」は特に心配でしょう、というように、ご本人の病気だけではなく、その背景まで把握して診療にあたることができるのです。こちらがそこまで知っている一方で、逆に患者さんも僕が小さかった時の頃のことまでよく知ってるわけで、そういう患者さんからは「若先生」なんて呼ばれています。(笑) 僕が生まれたときのことを知っている方も何人かいらっしゃいますよ。


--お父様の働く姿を見ていて、子供の頃からお医者さんになろうと思っていらしたのですか?

松村:いや、そうでもなくて、僕自身、本を読んだり、文系の科目が好きだったので、そっち方面に進もうかと思ってたんです。父も後を継いで欲しいとはひと言も言わなかったです。でも、高校でいざ進路を決めるとき、そこはかとない世間的なプレッシャーに負けました(笑)。地域の人達には子供の頃から「松村医院の後継ぎ」というように見られてましたし、それで結局医学部を目指すことに…。長島一茂と同じです。

ドラマ「北の国から」の世界に憧れて北大へ

--東京にも医大はいろいろあるのに、どうして北海道の大学を選ばれたのでしょうか?

松村:どうせ勉強するならいい環境で楽しく学びたいじゃないですか。で、ドラマ「北の国から」の世界に憧れて北大にしたんですよ(笑)。実際、自然豊かな素晴しい環境で、大学生活はすごく楽しかった。大学に入った時点では、本気で 医者になろうと思ってました。その頃から僕のめざす将来のビジョンとして頭にあったの は、父が築いてきたこの医院であり、地域に密着した『町のお医者さん』ということでしたね。

 例えば子供の頃、夜中にトイレに起きると、父が急患の患者さんを診ていることもありましたし、僕も薬包紙で粉薬を分けるのを手伝ったりしたこともありました。そのころはサラリーマン家庭の友達が週末家族でどこかへ遊びに行ったりするのを羨ましいと思ったりもしました。他のうちのお父さんは会社へ出かけるけれど、うちの父は家にいて、患者さんを診ているというのが生活の一部だった。だから単純に、医者とはこういうものだと思っていたんですよ。ところが、大学病院へ行くと、イメージしているのと全然違うんですね。専門医の全盛期で、最新の高度な設備が整った先端医療がよしとされ、このような小規模の町医者というのはむしろ否定的な見方をされていました。でも家に帰ってきてみると、大勢の患者さんが診療を待っているし、父のような何でも相談できる医者が頼りにされている。学んでいることと現実のギャップに疑問を感じ、「どんな医療のあり方が患者さんに真に求められているのか?自分はどんな医者でありたいのか?」を追求していっているうちに、プライマリ・ケアに出会ったんです。日本ではまだ認められていないけれども、医学界のオピニオン・リーダーと言われる一部の人が、プライマリ・ケアのような基本的な医療をちゃんとやるべきだと言い始めた頃でした。学び始めるととても面白いし、やりがいもある、未開でもあるということで、自分でもどんどん深く探求していきました。

現場に携わりながら

--周りに流されず、“我が道を行く”という感じだったんですね。

松村:まあ、そうですね。でも、こういう新しいことをするにはエネルギーがとてもいります。幸いいろんな人に助けられてここまでやってこれました。卒業後は大学病院や教育病院で働いていましたが、ある程度学んだ時点でもう少し先を行っている海外でより深く学びたいと思い、UCLAの医学部で2年半勉強してきました。帰国後は、僻地で働きたいという希望もあったんですけど、父が一線を退くというタイミングもあり、ここで働き始めたのが33歳の時。一般的に個人で自分の医院を持つのは40代というのが平均ですから、僕の場合、早い方です。でも今思えば、自分が医者になり、医院で働くというのは、ごく自然な流れだったんですよね。

 父から引き継いでからは、自分なりに研鑽を重ね、つねに高いクオリティを保つように努力しつつ、より深くより高度な医療サービスを提供しようということで取り組んでいます。最近は在宅診療でいろんなことができるようになりましたし、インターネットなどを駆使すれば、より高度でより適切な診療ができるようになってきています。まだまだ向上が必要なので、日々勉強する毎日です。

--ところで、プライベートはどのように過ごされていますか?

診察風景
松村:最近は忙しすぎて、家族と過ごす時間がなかなかとれないのがちょっと辛いんですよねぇ。自分が子供の頃、余りあそんでもらえなかったんで、できるだけ家族と一緒に過ごしたいという希望はあるんですけど…。
 まとめて休めない分、1日の中でオン・オフの気持ちの切り替えはきっちりするようにしたいと思っています。好きな音楽を聴いたり、本を読んだり、わずかでもリラックスする時間を創るようにしています。

(取材日:2002年9月13日)



次回は《訪問診療・往診について》を予定しています。