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【コメント】
わたくし松村真司は、医師という仕事を「病気を治療するだけでなく、人々の健康を、そして健康的な暮らしや生き方をサポートする仕事。」そんなふうにとらえています。 日頃、私がどんな思いで患者さんと向き合っているかを知っていただきたいと思いました。
【過去のコラムは、こちら】
●第1回:「松村医院の医療方針
     (プライマリ・ケア)について」

●第2回:「往診・訪問診療について」
●第3回:「予防接種について」
●第4回:「研修について」
●第5回:「コミュニケーションについて」
●第6回:「クオリティ・オブ・ライフ」
●第7回:「松村医院の建物改築について」
●第8回:「松村医院の建物改築について
      〜第2弾 新生・松村医院へ」

●第9回:「(松村医院小史)第一部
      松村医院誕生から現在まで」

●第10回:「(松村医院小史)第二部
      松村医院誕生から現在まで」

●第11回:「上野毛さんぽ」
●第12回:「院長・松村真司の著書のご案内」
●第13回:「院長・松村真司の著書のご案内」
      

第14回:「院長松村真司のおすすめ本《一般書編》」


おすすめ本後半は、私(当医院院長・松村真司)が長年勉強してまいりましたプライマリ・ケアや家庭医療・総合診療についての一般書の中から、プライマリ・ケア医を目指す医学生の皆さんに是非読んでいただきたいおすすめ本を10冊の中から、一般書4冊をご紹介させていただきます。




『先生…すまんけどなぁ…』
桜井隆(著)
出版社: エピック (1999/07)

自費出版のためうちの医院に来ないと読めない本ですが、大阪の整形外科・内科のお医者さん、さくらいクリニック院長の桜井隆さんが書かれた本です。

一人のおじいさんが外来にやってきて、最後に自宅で亡くなるまでの患者さんとお医者さんのやりとりがストーリー仕立てで書いてあります。テーマはとても重たいのですが、すごく肩の力が抜けた内容になっていて面白く読めます。ここに出てくるお医者さんは、なんだかとても人間味のある先生で、「こういうお医者さんが身近にいるといいね」という気持ちにさせてくれるんです。そういうお医者さんって、どこに行けば見つかるんだろうと考える人も多いようにも思うんですが、実は意外に近いところにいるんだとな、いうのはこの本を読むと分かると思うん ですね。それぞれのエピソードが具体的で、ほろりとする場面もあって、泣ける本です。うちの医院が混んでいるときに、待合室でお待ちになっていた患者さんがこの本の最終章のところまで読んだところでちょうど順番が来て、診察室に「この本、すごくいい本です」って涙ながらに入って来られたことがありました。そのくらい、感動的な本だということです(笑)。





「老年症候群」の診察室
超高齢社会を生きる
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大蔵 暢(著)
出版社: 朝日新聞出版 (2013/8/9)

もう一つは大蔵 暢先生が書かれた本です。大蔵先生は、区内のとある老人介護施設での診療を主に担当している老年内科がご専門の先生です。彼は、日本では数少ないアメリカの老年内科の専門医資格を持ったスーパードクターです。ちょうど私が留学中に、大蔵先生も米国に留学中で、その時から実は交流が続いています。

この本には老年内科のエッセンスを一般向けにわかりやすく解説してあります。病気と老化っていうのは一見すると同様に見えるのですが、その区別は実は難しく、主体が老化である場合、病気を治そうとしてしまうと、そもそも病気ではないので治らないし、かえって症状が悪くなって結果として不幸になってしまうことがよくあるんです。日本は世界で一番高齢化が進んでいる国なので、日本の高齢者診療は、多分世界でも最先端を行っているんですよ。これからもしばらくこの傾向は続くでしょうから、いずれ医療の中では最も重要な分野の一つになると思うのですが、その分野は結構すっぽり抜けているんです。みんな、一所懸命、老化を治そうとしていることがたびたびあるのです。がしばしば見られるのです。老化は治そうとするのではなく、うまく付き合っていくほうがよいことが多いのですが、本書にはその付き合い方についていろいろな事例をひもときながら解説してあります。プラマリ・ケアは、高齢者だけが大事なのではなく、もちろん 赤ちゃんやお子さんのケアとか、青少年、妊産婦さん、働いている人のケアなども大事なんですが、今は非常に高齢者が多いので、日本で診療する以上は、高齢者診療が主体になって行きます。松村医院に来られる方の多くはやはり高齢者になりますので、そういう方に私がどういう視点をもって診療にあたっているのか理解するためには、この本はとてもいい本だと思います。お勧めです。





かかりつけ医がいるとプラス10年長生きできる
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大橋博樹(著)
出版社: 幻冬舎 (2013/4/30)

登戸でご開業されている大橋博樹先生が書かれた本です。この先生は、私より一回り下の、若い世代の先生ですが、一般の人向けにかかりつけ医、家庭医という医師がどういうお医者さんなのかを解説してあります。

数年前に家庭医を目指してアメリカのシアトルで研修中の先生が日本に研修にいらしたんです。その時、地方都市だけでなく東京の医療現場も経験したいということで紹介され、当院に研修にいらっしゃいました。一カ所を経験するだけでは不十分だと考えたので、その時に、近いということもあって著者の大橋先生のクリニックでも続けて研修をすることになりました。せっかくの機会なので私もその先生の実習に合わせて見学させてもらったのですが、すごく感じのよい素敵なクリニックでした。連日百人以上の患者さんがいらっしゃるとても人気のクリニックと聞いて行ったのですが、そんな中でもスタッフの雰囲気も良く、大勢の患者さんが来るのも納得でした。まあ、実は、こういうクリニックってどこにでもありそうで、実はなかなかないんですね。小さな子供からお年寄りまでいて、お家で亡くなりそうだったら、在宅も見てくれて、常に勉強をしている若い先生が必ず何人かいて、その上で経験を積んだ大橋先生がいて、スタッフの方も協力してよいクリニックを作ろう、という意欲に溢れているのがとてもよく伝わって来ます。





なずな
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堀江 敏幸(著) 出版社: 集英社 (2011/5/2)

最後は全然医学とは関係のない小説をご紹介します。この本は芥川賞作家の堀江敏幸さんが書かれた小説で、独身の主人公の男性がとある事情で急に親戚の赤ちゃんを預かることになる話です。それまで子育てとは全然縁のなかった男の人が四苦八苦しながら子育てをするという小説です。僕は堀江さんのファンで、今まで出た小説はほとんど読んでいるんですが、本書は彼の他の小説と毛色が違って、ボリュームはあるのですが読みやすい本になっています。主人公の家の近くで開業している甚五郎先生というお医者さんが出てくるんですが、その先生のやっていることがまさにプライマリ・ケアなんです。主人公がアタフタするときも、すぐに適切なアドバイスをくれるんですね。でも普段は身近にいて、親しみやすい先生なんです。時々主人公と先生は時々近所の飲み屋で会うんですが、そんな時はお酒を飲んで酔っ払っているんです。甚五郎先生の親しみやすさというか、医師としてのスタンスが、まさにプライマリ・ケア医を体現していて、そういった視点からも興味深く読みました。もちろん、酒を飲んで酔っ払うところではありません。(苦笑)

日常のお付き合いは、ざっくばらんで弱い面も見えるんですが、子育ては親だけでできるものではありませんし、近くにいる子育て経験のあるお母さんや同じアパートの隣人などさまざまな人の助けの中で生活をしているのです。その小さな子育てネットワークの中の一員として、お医者さんがいるというのが、特にすごくいいなと思いました。プライマリ・ケアを理解するには、こういうお医者 さんの立ち位置も理解するのがよいのかなと思います。


(次回は、未定)